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コラム

頭じらみが大流行
―兵庫県皮膚科医会 皮膚病サーベイランス情報―

兵庫県皮膚科医会では1986年3月より、サーベイランスを開始しており20年以上続いている。

患者総数(1987~2006)
グラフ1

今回1987年1月から2006年12月までの20年間のデータを示します。サーベイランスの対象とした疾患は18疾患(グラフ1)で麻疹は2004年7月より対象疾患に加えています。20年間の患者総数は25万2697人で報告数の多い伝染性膿痂疹、伝染性軟属腫、単純ヘルペス,帯状疱疹の4疾患で全体の85%を占めています。又、報告数の少ない疾患はリッター剥奪性皮膚炎、顕症梅毒、乳児多発性汗腺膿瘍となっています。

疾患名 TOTAL 定点当り1ヶ月平均症例数
男性 女性 2004年 2005年 2006年
単純ヘルペス(外陰除く) 1262 2298 3560 11.03 11.53 12.11
外陰ヘルペス 70 80 150 0.62 0.52 0.51
カポジ水痘様発疹症 156 99 255 0.81 0.95 0.87
水痘 149 156 305 0.75 0.90 1.04
帯状疱疹 986 1407 2393 7.55 7.81 8.14
手足口病 44 61 105 0.45 0.24 0.36
尖圭コンジローマ 25 15 40 0.16 0.19 0.14
伝染性軟属腫 1074 1016 2090 7.02 7.52 7.11
風疹 1 7 8 0.03 0.04 0.03
伝染性紅斑 64 84 148 0.47 0.53 0.50
乳児多発性汗腺膿瘍 2 3 5 0.01 0.02 0.02
伝染性膿痂疹 1423 1201 2624 8.98 9.13 8.93
リッター剥脱性皮膚炎(SSSS) 5 9 14 0.04 0.01 0.05
疥癬 75 85 160 0.37 0.47 0.54
毛じらみ症 34 8 42 0.27 0.22 0.14
頭じらみ症 118 378 496 0.66 0.84 1.69
顕症梅毒 3 1 4 0.04 0.01 0.01
麻疹 1 0 1 0.007 0.000 0.007
5491 6908 12399 39.28 40.93 42.18

表1

最近3年間の報告数(表1)を見てみますと、単純ヘルペス,水痘、帯状疱疹,疥癬、頭じらみが増加していますが、しかし、一方で毛じらみは減少しています。

頭じらみ症の年度別1ヶ月の1定点当りの平均例数
グラフ2
頭じらみ症の性別・年齢別分布(1987~2006年)
グラフ3

頭じらみはサーベイランス開始以後、1992年度と1999年度に流行がありましたが、2006年度は過去最高の報告数となっています(グラフ2)。そして2007年度に入った後も昨年度を上回る報告が続いています。終戦後ほぼ絶滅したとされてきた頭じらみですが、海外との交流が盛んになって国内に持ち込まれ再び広がり始めたとも言われています。年齢的には、成虫が皮脂を嫌う為、殆どが思春期以前の子供に多く,髪の長い女児の報告数が多くなっています(グラフ3)。
子供が頭じらみになってしまったことを恥かしいと考えたり、最初にしらみが見つかった子供が「感染源」とされ、仲間外れにされる恐れがあり、親同士が話題にしないことも蔓延につながっているかもしれません。


夏季の小児のスキンケア

皮膚病には様々な病気がありますが、季節によりずいぶん違います。
夏には虫さされ、あせも、オムツ皮膚炎、小児湿疹、などの皮膚炎やとびひ、水いぼ、みずむし、ヘルペス、手足口病などの感染性の疾患が多くみられます。

では、なぜこれらの皮膚病が増加してくるのでしょうか。
夏には、気温、湿度が高くなり、服装も半袖,短パンなど肌を露出することが多くなります。
その為、とくに、小児の皮膚ではバリアーの役をしている角質層が剥がれ落ちたり,皮脂の分泌、発汗がますます盛んになるため汚れが付着しやすく、それが皮脂腺や汗腺をつまらせたり、細菌感染も起こしやすくなります。
また、体温が上がったりして、もともとあった皮膚病が増悪することもあります。

小児のスキンケア

これらを予防するには皮膚表面の汗、皮脂、剥がれかけた角質層、付着した細菌などをできるだけ早く取り除くことが必要であり、入浴が何より効果的です。
とくに、石鹸を使ってよく洗うことが大切です。ただし、ナイロンタオルやたわしなどで洗うのは刺激になるうえ、必要以上の皮脂や角質層まで剥がれてしまうので、柔らかいガーゼや素手でよく泡立ててこすらない様に洗うことが必要です。

また、海や山、キャンプなどに出かける機会も増え、長時間、日光に曝されることが多くなる季節でもあります。
日光はひどいひやけを起こすだけでなく、皮膚の抵抗力を弱めヘルペスなどの感染症をおこしたり、皮膚がんの発生を増加させたりします。そのため、帽子や長袖をきて皮膚を保護したり、サンスクリーン剤を使用することも大切です。

夏季は特に小児の皮膚病の増加する季節です。
スキンケアに心がけ、予防していくことが大切ですが、皮膚病が発症してしまった場合は早めに皮膚科専門医を受診されることをお勧めします。

たなか皮フ科・形成外科 田中 靖